座敷 (アトピーの治療)ゆっくり、あせらずに治療を続けましょう。
対症療法で症状を抑えると、生活が楽になります。
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【おもなステロイド外用剤と強さのランク】 ●ステロイド外用剤の副作用ス外の副作用について、一般向けの本から引用して紹介します。皮膚科 では、このような説明をされることが多いと思います。-------------【副腎皮質ホルモン外用剤の副作用】------------- 従来、副腎皮質ホルモンは内服の場合は、種々の重大な副作用が問題 になったのですが、外用の場合は、心配ないといわれていました。しかし 最近は、強力な外用剤が開発されるにつれ、外用でも副作用を全く無視 することはできなくなりました。 最も問題になるのが、前に説明した、酒さ様皮膚炎ですが、その他に も、長期間、同じ場所に強力な外用剤を連用していると、皮膚が薄くな り、血管が拡張し、皮下出血をおこしやすくなったり、毛が濃くなったり、 ニキビができたり、オデキや水虫、カンジダ症になりやすくなるなどの 副作用がみられるようになります。 ------------------------------------------------------------ (「皮膚病の症状と治療」中内洋一著、梧桐書院 より) 酒さ様皮膚炎とは、顔が赤くなる皮膚病「酒さ」(しゅさ:この「さ」は、 「査皮」をひとつにした文字です)に似た症状です。 ス外は塗る場所によって、副作用の出方が違ってきます。肛門などの粘 膜はもっとも吸収される部位ですが、顔や首もよく吸収されるので、副作 用が出やすくなります。「身体用」と「顔用」に分けてス外が処方される ことが多いのは、そのためです。「顔用」のス外は「身体用」よりも、弱 いランクになります。 ス外の副作用が問題になる前は、患者さんにしても、医療機関にして も、無頓着な扱いをしたために、副作用(酒さ様皮膚炎など)が見られた ようです。「身体用」の方がよく効くからと顔に塗ったり、売薬のス外( 強いランクの物まで医師の処方なしで買えるので、問題です)を顔に塗っ たりする例があったようです。 特に女性の場合はス外を塗ると化粧のりが良くなるようで、私が会った 人でも下地作りに常用していた人がいました。 ス外は薬ですから、他の薬と同様に副作用は避けられません。しかし安 全と思われている非ステロイド系の外用剤(消炎鎮痛剤を配合したもの) にしても、刺激が強くて接触皮膚炎を起こすことがあり、おまけに抗炎症 作用がス外に比べてずっと弱いので、こじらせることがあるそうです。 そう言えば非ステロイド系の軟膏(アンダーム)は、私の息子の時はちっ とも効きませんでした。「これはステロイドが入っていないから安全です」 と出されて喜んでいたのですが、塗っても塗っても良くなるどころか、 段々にひどくなりました。「よほどひどいのかな」と不安にもなりましたが、 今考えればその時の症状を抑える力ない薬が処方されていただけの話 でした。 またアトピーの人は白内障になることがあり、ス外の副作用のように言 われることもあります。しかし実際は「ス外の副作用ではない」というの が、眼科医や皮膚科医の一般的な認識になっているうです。私が会った 患者さんでも白内障になった人たちは、急にス外を止めたために、顔を 叩いたり掻いたりして白内障に至ったと思われるケースでした。 ●「リバウンド」についてス外を塗り続けていた人が、急に外用を止めると、症状が噴き出すよう に悪化することがあります。ス外を塗り始める前よりも悪化することも多 く、「ス外の副作用のためにこうなった」と考える人もいるようです。 このような現象を「リバウンド」と呼んで、ス外の問題点であると思ってい る人は少なくありません。しかし皮膚科医は「リバウンドはステロイドの内 服に起こる現象であって、ス外では起こらない」と考えている人が一般的 でしょう。膠原病などの治療のためにステロイド剤を内服すると、副腎皮質ホルモ ンの血中濃度が高くなり、症状が抑えられますが、副腎はホルモンの分 泌を減らしてゆきます。そのような状態で急にステロイド剤の内服を止め てしまうと、副腎皮質のホルモンが分泌されていませんから、症状が服 用前よりもひどくなってしまうのです。これがリバウンドです。 しかし外用剤の場合は、血中に吸収されるのが微量のために、よほど 強力なランクのものを大量に長期間(1日10〜20gを数ヶ月間)使わない と、副腎の機能は影響を受けないそうです。 つまり、ス外では「リバウンド」は起こり得ないことになります。金沢大学 の竹原和彦先生は、民間療法などの「アトピービジネス」が、内服にしか 生じないはずのリバウンドを、「リバウンドを起こすような薬を軟膏にして いる」と話をすりかえて、ス外への恐怖心をあおっていると指摘していま す。 ではス外を止めると塗る前よりも皮疹がひどくなる現象を、どう解釈した らよいのでしょうか。ス外は炎症やかゆみを抑える働きがあるので、塗 ると皮疹が消えて楽になっていきます。しかし皮疹の素である掻きぐせ や、低下した皮膚のバリア機能、アレルギー反応、湿疹化しやすい体 質などはそのままになっているので、ス外を止めると皮疹がまた出て来 るのでしょう。 そして皮疹の悪化でイライラしたり落ち込んだりで、皮膚を掻き壊してし まい、ス外を塗る前よりもひどくなる、という現象が推測されます。 ス外はあくまで対症療法なので、症状のコントロールはできますが、根本 的な改善をもたらすわけではありません。生活を整えたり、成長や精神 的な安定が得られたり、あるいは自然治癒力が働いたりして根本が良く ならないと、止めた時に症状が出て来ます。つまりス外の効果を見て 「治った」ように思ってしまう、というのが「ス外のリバウンド」の本態であ ると考えられます。 ●ス外慎重派の意見皮膚科医の中にはス外の使用に否定的であったり、脱ステロイドを唱え ている人もいます。その中にはアトピービジネス的な医師もいるようです が、実証的な臨床経験からス外の使用には慎重になっている医師もい るのです。青木敏之先生(皮膚科アレルギー科クリニックかゆみ研究所)は著書 の中で、「ス外は第一選択の治療薬ではないが、ス外を絶対に拒否す るのは損」と述べています。 詳しくは著書を参照していただくとして、環境対策(皮膚刺激対策、黄色 ブドウ球菌対策、アレルギー対策、かゆみ対策)を行ない、ステロイドを 含まない古典的な外用薬(亜鉛華軟膏、カチリ、カプサイシン軟膏)を用 いて、それでも効果がない場合にはステロイドを使うという考え方のよう です。ただし、環境対策はその一つ一つが手間暇のかかることです。十 分に理解をして、労力を費やす覚悟でとりかかる必要があると思いまし た。 青木先生が「ステロイド治療の適応と不適応」をまとめておられるので、 紹介します。 ------------------------------------------------------------ 1.ステロイドの使用を控えるべき状態 a.コリン性そう痒の状態 b.もっぱら掻くことによって悪化する症例 c.習慣性掻はの状態 d.季節の消長がはっきりしている症例 2.ステロイドを注意深く減らしていくべき状態 a.ステロイドを強めてもまったく反応しない皮膚炎 b.長期大量のステロイドの使用により到達した皮膚の最終段階 3.ステロイドを注意しながら使用すべき状態 a.乳児期・幼児期の湿疹 b.活動性皮疹があまりにも広範につづくとき 4.ステロイドの使用を変更すべきでない状態 ステロイドの継続使用により小康を得ているとき 5.積極的にステロイドを使う状態 a.急速な発症または症状の拡大する恐れのあるとき b.改善の見込みのない状態が長くつづくとき c.本人ばかりでなく家族の健康な生活まで阻害されるとき d.皮疹の程度が強くても部分的であるとき e.手の湿疹 ------------------------------------------------------------ (青木敏之著「アトピー性皮膚炎を治す」日本評論社,1999 より なおa.b.c.……は管理人がつけました) 同書の中から注をつけると、 1a.:汗をかくときに痒みが起こる状態。夏に良くなり冬に悪化 1c.:手がつねにどこかを掻いている 2a.:かぶれ、感染、掻きすぎなどによるもの 2b.:この頃はさすがになくなったが、かつてはいた とのことです。 ●ス外の間歇使用私が勤務していた星の丘クリニックでは、ス外を1週間に何日塗るか、院 長が患者さんに指示をしていました。ただし皮疹を効果的に抑えるために、強い ランクのものでした。よほどひどい状態だと週に4日塗って、3 日休みます。それで皮疹が落ち着いてきたら、段々に減らしていくやり方でした。 入院患者さんの例では、週に1日程度の塗布で退院できる人が多く、ス 外を切って退院する人もいました。このような使い方には、副作用の心配を減らしたり、皮疹の程度を患者 さんが把握できる(例えば、ス外を切っている間に塗る日が近づくと痒く なるとか)メリットがあります。良好な状態になるまでは、週に何日塗る かを院長が診察して指示を出しています。 星の丘クリニックを開院した時には、ス外を全く使わないで治療 していたそうです。その時には私はまだ勤務していなかったので、当時 の様子を聞くと、患者さんも職員もずいぶん苦労したようです。皮疹を抑 えて患者さんの心理的・経済的な負担を減らし、生活の質を高めるため にス外を使うようになったそうです。 ●ス外の使い方ス外の使い方で、気をつけなくてはいけない点は、どのようなことでしょ うか。まずはよく知られていることですが、要注意の部位として顔と首が 上げられます。吸収率が高く副作用が出やすくなります。身体用と違う 強さのス外が処方されている場合は、必ずそれを使うようにします。次に良くない使い方をあげます。 ・不潔な皮膚に塗る 入浴は一番風呂に入り、シャワーをかけて上がる。きれいなタオルで拭 いて、ス外を塗る手も清潔にして塗るのがベスト。不潔な皮膚に塗ると、 ばい菌が繁殖して良くないそうです。これは息子がかかっていた先生が 教えてくれました。 ・怖がって塗る ほんの少しつけて、こすって伸ばすような塗り方では量が不足して効き ません。 ・効かないス外を塗る 皮疹に対して弱過ぎるランクのものや、ス外を薄めた過ぎたものを塗っても、充分な効果 は得られません。「塗っても塗っても治らない」状況になります。 ・皮疹のない所に塗る 予防的に塗っても意味がありませんし、副作用が出やすくなります。 ●ス外に治せないことス外は正しく使えば、皮疹やかゆみを抑えるのに有効な手立てです。 しかし、いかにステロイドでも治せないのが「掻きぐせ」なのです。成人の アトピーの場合で、難治化してしまっている人は、ほとんどが掻きぐせに よるものと思われます。掻くことでストレスを発散したり快感に浸るのは、 自分の身体を相手にする構造ができあがってしまっていて、一種の引き こもりではないかと考えます。ステロイドで症状をコントロールしてゆく一方で、日々の生活を見直した り、ストレス・マネージメントを実践したり、家族との関係を変えたり、場合 によっては自分の性格を変えて行くようにすることで、本当の意味での 回復が期待できます。
4.アトピーの入院治療●アトピーの入院治療私が勤務していた星の丘クリニックは、入院の設備がありました。ご存知 のように皮膚科では通院治療が一般的であり、大きな総合病院でも皮 膚科だけの病棟を持っている所は少ないと思います。たいがいは泌尿器科や耳鼻咽喉科など、入院患者が少ない診療科と混 合で、アトピーよりは皮膚科の難病(悪性腫瘍の他、膿疱性乾癬、強皮 症、天疱瘡など、一般には耳にしない病気が沢山あります)の方が多い と思われます。 精神的に落ち込んでひきこもったり、ステロイドを一気に止めて症状がひ どくなったような時は、自宅で療養していても回復するまでがつらいし、ど うしても時間がかかります。そのような時には入院治療で悪循環を断ち 切り、いったん症状を良くして維持していく方が良いのです。またストレス の多い日常から離れてみたり、生活のスタイルを見直す機会として、入 院した方が良い場合もあります。 アトピーの入院治療を行っている病院は、数としては少ないのですが、つ らい毎日を過ごしている方は入院を考えてみても良いのではないでしょう か。 ●星の丘クリニックの入院生活他の病院のことはわかりませんので、私の勤務先ではどのような入院治 療をしていたのか、ご紹介します。星の丘クリニックは、岩手県は盛岡市から30kmほど南下した「石鳥谷 町」の、山ぎわに位置しています。アトピーの治療を主たる目的として 1995年に開設、「星の丘」の由来は星が美しいからだそうです。 「病院」ではなく「医院」なので、ベッドは19床、4人部屋が3室の他は 個室になっていました。周りは自然がたっぷりで、空気がきれいな 所です。 院長の岡部俊一は皮膚科医ですが、漢方を学び心理的な側面にも関心 を持っていました。アトピーに良さそうなことは、何でもやっていこうという姿 勢でした。「入院」と聞くと診察や検査、処置を受ければ、あとは食事をして おとなしく寝ている生活が想像されますが、星の丘の入院生活はかなり 違っていました。 午前中は診察を受けたり、看護婦さんから処置をしてもらいますが、こ れはどこでも同じでしょう。外用剤はステロイドを週に3日とか、2日と か、症状を見て減らして行きます。ステロイドを切って退院する人も、 少なくありませんでした。どうしてもステロイドを使いたくないと言う人には、 使わないで治療をしていました。 星の丘の患者さんは、日に一度は漢方薬を煎じていました。と言っても一回分 が紙袋に入っているし、煎じ器は自動タイマーで止まるので、難しくはあ りません。煎じ薬は濃縮エキスのような物ですから、臭いは強烈で凄味 のある色をしています。そして昼食前に、30分間のストレッチ体操があり ました。午後は一日一万三千歩を目標に散歩に出かけるよう、病院では 勧めていました。 食事は玄米食が基本で、新鮮で安全な食材で作られ、調味料も吟味 されていましkた。希望すれば管理栄養士から栄養指導を受けたり、二週 間かけての超少食療法も受けられました。また温泉(単純アルカリ泉、ま じりっけなしの濃いやつ)が引かれていて、湯治ができるようになってい ました。このお湯は、肌がツルツルになると好評でした。 そしてこれは私の担当でしたが、カウンセリングを受けることができました。 私はまず一度お会いして、心理テストを通して見えてきたことを伝えたり、 お話を聴いていました。そして自分の場合はどんなことがストレスになりやすい のか、考えるきっかけにしてもらっていました。 その後は希望によって、カウンセリングを続けていました。 ●入院で癒されるさて、星の丘クリニックの入院治療をかいつまんでご紹介しました。し かし私は治療のプログラム以外の部分でも、患者さんが癒されていた ような気がします。一つはストレスの多い日常生活から離れて、自然からも元気をもらい、 休養する効果があったのでしょう。もう一つは、同じ病気をもった仲間と の出会いが大きな要素だと思います。 入院するとアトピーの人がほとんどですから、症状がどんなにひどくて も、人目を気にしないで良いのです。そしてお互いの体験を話したり、 一緒に散歩やスポーツをしたり、遊んだりするようになります。入院中 に仲の良い友達になって、退院してからもつきあいの続く人たちも多い ようでした。 子どもの頃からアトピーだった人たちは、同世代の集団の中で傷ついて きたようです。症状が顔に出るとからかわれたり、いじめられたりするの はもちろんですが、何もされなくても気後れして対等につきあえないと か、周りを気にしてしまいがちです。それが同世代の集団の中で癒され ていく姿を見ると、傷を作るのも癒すのも人との出会いだなあ、と思 っていました。 |
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