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待合 (アトピーとの出会い)

精神科の臨床心理士が、アトピー性皮膚炎と出会いました

吹かれてひらひら 星の丘クリニックに勤務していた5年間、私は日本でただひとりの、皮膚科に常勤している臨床心理士でした。


1.プロフィール

●青山正紀(Aoyama Masanori)

函館の旧英国領事館にて 1959年生まれです。 精神科の病院に臨床心理士として勤務していましたが、息子を通じてアトピー性皮膚炎と出会い、 心理的な援助の必要性を感じました。1997年から2002年まで岩手県の (医)中庸会星の丘クリニック(皮膚科・心療内科) に勤務 していました。アトピー性皮膚炎だけでなく、他の皮膚科心身症の 患者さんや、神経症、不登校、高齢者などさまざまな方を対象に、心理的な援助を行なっていました。
2002年3月で星の丘クリニックを退職して、 あゆみカウンセリングルームを開業しました。


●星の丘クリニック

岡部俊一先生を院長として、 アトピー性皮膚炎の治療を主たる目的に、1996年に開設された有床診療所です。
岩手の自然に囲まれ、肌がツルツルになる温泉がわいているなど、理想的な 環境に恵まれています。2001年に岡部先生が亡くなるまで、 心身医学の立場から漢方薬、食事療法、運動療法、心理 療法など、アトピー性皮膚炎の総合的な治療を行なっていました。

■住所■
〒028-3182 岩手県花巻市石鳥谷町松林寺3-76-2
tel.0198-46-1010 fax.0198-46-1011


●お知らせ
星の丘クリニックの院長であった岡部俊一先生は、平成13年11月23日に逝去され ました。引き続き医療法人中庸会がクリニックの運営にあたってきましたが、現在は「星の丘ペインクリニック」として開業しております。皮膚科の診療はしておりませんので、受診される方はご留意ください。

●皮膚科心身症

心身症とは身体症状の始まりや経過に心理的要因が濃厚に作用してお
り、治療に心理学的な関与が必要な病気を言います。つまり心身症とい
う病名はなく、神経症などの精神疾患は除かれます。皮膚科心身症の
主な病気として、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、慢性湿疹、慢性じん
ましん、多汗症があげられます。

仕切

2.アトピーとの出会い

「あの子、アトピーだって先生に言われたのよ」当時2才の息子の湿疹に
ついて、妻がこう切り出しました。これが私とアトピーの出会いです。その
時までアトピーなる言葉は、聞いたこともありませんでした。
「アトピーってなんだい? できものの一種かい」と言ってみたものの、妻
の表情は深刻そうです。放っておいても治る病気ではなさそうです。しか
しあんなに大変になるとは、その時には想像もできませんでした。もっと
も私よりも妻、妻よりも息子が苦労をしました。一番ひどかったのは幼稚
園の年中の頃で、ひざの裏に黄色いうみがにじみ、ひび割れが痛くて歩
くのもままならない有様でした。

息子とお風呂に入っていた時に、こんな会話をしたのを今でもおぼえて
います。
「おとーさん、しんでいるのって、どういうこと?」
「動けなくて、目も見えなくて、耳も聞えなくて、お話しもできなくて、考
えることもなくて、なーんにも感じなくなるんだよ」
「ふーん。だったらぼく、しんでいるのがいいなあ。だってぼく、あとぴい
なんだもん。あとぴいがあるんだもん」
幼い息子が淡々と言うだけに、私にはこたえました。しかしどうしてやる
こともできません。すでに良いと言われているものは、できるだけしてい
るつもりでした。初めは小児科の医院にかかり、消炎剤の軟膏とステロ
イド外用剤、それに抗アレルギー剤の内服が処方されていました。しか
し一向に良くなりません。次は「ステロイドは良くないと」いう話を聞いて、
知人に漢方の先生を紹介してもらい、東京からせんじ薬を送ってもらっ
ていました。
その他には、ほとんどお決まりのコースと言いましょうか、洗剤、寝具、
石鹸、ローション、温泉、入浴剤……と、色々なものを試してみました。
良くならないのはまだしも、かえって症状の悪化を招くものもありました。
何が良くて何が悪いのか、さっぱり見当がつかなくなってしまいました。

突破口になったのは、車で1時間ほどかかる国立療養所のアレルギー
外来(小児科)でした。院長は息子を一目見て、妻を叱りつけたそうで
す。妻は今までやってきた努力をすべて否定され、目を真っ赤に泣き
はらして帰ってきました。私は驚いたし、ろくでもない医者ではないかと
も思いました。
しかし彼は、どうすれば良いかを示してくれたのです。
ステロイドは一日一回だけ、入浴後に塗る。不潔な状態だと細菌が繁殖
するので、風呂上がりにシャワーをかけて、きれいなタオルで拭き取り、
清潔な手で塗ること。食事日誌をつけて、何を食べた後に悪くなるか探
ること。食事は「戦前の食生活」に近づけること。……等々。
息子の状態は、生活全体をアトピーに支配されている、としか言いようが
ありませんでした。ステロイドは怖いなどと言っていられないはずなの
に、情報に踊らされて現実が見えなくなっていたのでした。院長の叱責
は、目のうろこを叩き壊すための一撃だったのです。そのショックにも
めげず通院を続けた妻も、立派でした。

息子のアトピーはゆっくりではありましたが、症状が軽快していって喘息
の方に移行して行きました。そばアレルギーであることも判明。一時は
「こんなに薬漬けにして良いのだろうか」と思ってしまうほどでしたが、
小学3年に岩手に引っ越すころには体力もついてきて、かなり良くなって
いました。現在は小学6年ですが、ごくたまにステロイドのお世話になる
ものの、ふだんは何も塗らないで済んでいます。喘息も風邪をひくと軽い
発作が出るくらいで、ほとんど治まっています。

さて、私は息子を通じてアトピーに出会いました。アトピーをめぐってどの
ような現象が起きているのかも、見えてくるようになりました。また子ども
のアトピーのことで、お母さんたちが妻に相談をしてくるようにもなりまし
た。当時、私は精神科の病院で働いていました。アトピーの患者や家族
で、心理的な援助を必要としている人が、沢山いるのではないかと思う
ようになりました。日本ではまだほとんど手つかずの分野ですが、だれ
かが取り組まなければ進んでいきません。 そのような思いが、星の丘
クリニックに転職する動機の一つになりました。

仕切

3.アトピーって何だろう

私が最初に抱いた「アトピーって何だ?」という疑問は、今でも続いてい
ます。つきあえばつきあうほど、分からなくなっているようです。 アトピー
という病気のメカニズムについて、あるいはアトピーの増加、高齢化、難
治化について、色々な人がさまざまななことを言っています。ざっと思い
浮かぶだけでも、

・環境変化説 ― 大気汚染、スギ花粉の増加、寄生虫の減少(免疫反応の亢進)など

・住環境説 ― ハウスダスト、ダニ、シックハウス、合成洗剤、冷暖房の普及(自律神経 機能の低下)、水道水の塩素など

・食べ物説 ― 食生活の欧米化、食品添加物、農薬など

・医原病説 ― ステロイドの副作用、リバウンドなど

・心因説 ― ストレスの増加、家族力動、パーソナリティ形成の不全など

……とまあ、諸説紛々であります。
しかし私には「アトピーの正体は○○である」などと言うような、新説はあ
りません。自分の専門である心理についても、心因だけでアトピーになる
とまでは考えにくいと思います。心因でアトピーが悪化したり、治りが悪く
なるということはあるでしょう。私は成田善弘先生が言われるように、
「わからないことは、わからないままにしておく」ことにします。そして役に
立つことを患者さんとともに探してみます。このページを読んで下さる
方とも、一緒に歩んでゆけたら良いと思います。



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