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1.温泉の正しい利用法
寒さも和らぎ、温泉の季節ではなくなってきましたが、私達アトピー患者にとって温泉は、
薬湯であります。温泉には、お風呂の何倍もの天然化学成分が含まれており、これが体に
作用しアトピーの回復を早めますが、一度や二度その温泉に入っただけでは、温泉の薬効
は現れません。一ヶ月周期で皮膚は新しくなるため、アトピーの場合一ヶ月単位で経過を
見る必要があります。
入浴は、一回につき十分か二十分程度。長時間入ればそれだけ
効果がある、というのは間違いです。そして、上がる時に上がり湯をかぶる人がいますが、
せっかく体についた有効成分を落としてしまい意味がありません。上がった後は、横になる
などして安静を保つと、その間に有効成分が皮膚から浸透して効果が現れます。
硫黄泉は皮膚を刺激し、かゆみを増しますが、強塩温泉はアトピーの患者さんに合ってい
ると言えるでしょう。
(第2号:1996.4.6)
2.入浴について
アトピーの治療を温泉にばかり頼っている人が少なくありません。温泉には、角質をはがし
てしまう作用がある硫黄などもあります。「温泉でアトピーを治そう」とむやみに長湯をしたり、
旅行先で日に何度も温泉に入るのは、あまり好ましいとは言えません。普段からの入浴に
目を向けることが、大切なのではないでしょうか。
アトピーの人は、長時間入浴すると血行が良くなり炎症が増すので、40度以下のぬるいお
湯にゆっくりつかるのが良いでしょう。アトピーがひどい時は、シャワーだけでかまいません。
泡立てた石けんを手のひらにつけてそっと洗い、すぐにシャワーで十分にすすぎます。
タオルでふく時も、そっと押さえるようにふき、かゆところをこすらないように気をつけましょう。
石けんも、使いすぎると皮膚を壊してしまうので、朝や日中の入浴やシャワーには石けんを
使わず夜だけにするのが良いでしょう。
シャンプーで頭を洗えば、顔や体に流れます。シャンプーは、汚れた髪を洗うのが目的です
から、かなり強力な中性洗剤です。指輪の下や指の間にもさっと入り込み、いったん皮膚に
つくとなかなか取れません。これがアトピーの敏感な皮膚を刺激して湿疹になります。リン
スも主成分は界面活性剤で、皮膚につくとなかなかとれません。「あとですすげば大丈夫」
というのは、健康な人の場合です。できればリンスは使いたくないものですが、使う場合は、
シャワーでよくすすいで下さい。洗髪がすんだら、すぐ乾いたタオルで頭をつつみ、その後、
顔、首、体の順で洗って下さい。
(第22号:1998.3.27)
3.カルシウムがたりない!
成人に必要なカルシウムは、一日約600mg。排泄物と共に、同じ量のカルシウムが出てい
ってしまいます。体外に排泄される分は、毎日の食事から補給する必要があり、ほとんどの
ミネラルは普通の食事で必要量をカバーできますが、吸収率の悪いカルシウムはちょっとし
たことで不足してしまいます。
カルシウムは人体に含まれるミネラルの中で最も量が多く、体重の2%を占めています。
その99%は骨や歯の硬い組織をつくり、残りの1%は他の組織や血液に働きます。また、
精神安定の働きもあります。ストレスの多い人は、カルシウムが不足したり、かゆみが起
きたりします。ですから、ストレスの多い人は、普通の人よりも多めにカルシウムを取ったほうがよいでしょ
う。
体内に吸収されたカルシウムは、骨芽細胞という細胞の働きで新しい骨をつくります。体の
中でカルシウムが不足すると、骨を溶かしその不足を補うため、骨粗しょう症になる恐れが
あります。
牛乳には、たくさんのカルシウムが含まれていますが、どうしてもアトピー患者さんは、牛乳
にアレルギー反応を起こす人が多いので、牛乳だけから多く取るのではなく、海草、ひじき
、さくらえび、煮干、小魚類、わかめ、ごまなどと一緒にバランスよく取りましょう。
カルシウムの吸収を良くする食品には、ビタミンDを含む干ししいたけや卵・牛乳・肉・魚
(いわし・さんまなど)があります。カルシウムの吸収を妨げる食品には、繊維質の多すぎ
るものや、青菜のアク、山菜・コーヒー・清涼飲料水・スナック菓子・アルコールなどがあり
ます。高血圧やぜんそくにカルシウムが効果をあげているということもあり、星の丘クリニ
ックでも、今アトピー患者さんに乳酸カルシウムを出しています。
(第10号:1997.1.4)
4.なぜ月経前に悪化しやすいの?
アトピーの女性では、確かに月経の時に悪化しやすいです。月経の始まる前や、月経の始
まった2〜3日間にアトピーが悪くなるようです。これは、今迄の私の長い臨床経験からばく
ぜんと気がついていたことです。では、どうして月経前に悪化するのかというと、はっきりと
答えられないのが現状です。しかし、私なりにその理由を考えると、次のようなことが考え
られます。
1)アトピーの患者さんは、自律神経機能の不安定な人が多いのです。例えば、アトピーの
患者さんでは普通の人より体温が高いことが多く、測ってみると約37.5℃の微熱を呈します。
また、顔面にアトピーの皮疹がある場合、朝起きた時は赤味は余り目立ちませんが、時間が
経つにつれて赤味が増していきます。また、対人的に緊張した時は、顔の赤味がより目立
ちます。また、食事中は決まって顔の赤味が増してきます。
アトピーの患者さんは血圧が低めの人が多く、起立性調節障害(OD)をともなっています。
月経は、自律神経をより不安定にしてしまいます。
2)アトピーは、色々なストレス(ひずみ)で悪化します。ストレスには、肉体的なストレスと心
理的なストレスがあります。月経は、肉体的なストレスの一つです。そこで、月経前にアトピー
が悪化しやすいのかもしれません。また、女性にとって月経は嫌なもので、色々な気遣いを
しなければなりません。気遣いは、その人にとって心理的なストレスになってしまいます。
岡部俊一(第13号:1997.4.16)
5.目標「1日13,000歩!」
あなたは、薬にばかり頼っていませんか? 「歩く」ことの大切さを知っていますか?
「胸を張って、堂々と大股で歩く」ことによって体の中で、少しずつ変化が起きていくのです。
ストレスが解消されたり、体力がつくばかりではなく、血の巡りが良くなって胃腸の調子も
良くなり、食事がおいしくなります。酸素もたくさん補給されるわけですから、考え方も前向
きになり、くよくよ考えることやマイナス思考もなくなるはずです。
「歩く」ことによって得られるたくさんの効果は、薬ではとても得ることはできません。精神的
ストレス・飽食・不規則な時間の使い方など、こうした生活の中でできた不健康な体には「
歩く」のが一番効果的なのです。
私達の体は、常にバランスよく保たれる働きがあります。酸性に傾くとアルカリ性にしようと
する力があり、精神が興奮すれば、それを抑制しようとする働きがあります。このように、
あらゆるものが平衡に保たれることによって、健康は維持されます。
人間はよく自分の体を丈夫だと思い込み、勝手気ままに行動してしまいます。その結果、
不健康な状態となり、アトピーをはじめとした様々な病気が発生します。「歩く」ことで私達の
体に備わっている恒常性(生体のいつも変わらない状態を保持する作用)が強化され、不
健康な状態を治してくれるのです。「歩く」ということは、何かの病気に効くというより人間本
来の優れた能力を発揮できるのです。
歩くなら朝です! 朝の空気は酸素の量も多く、すがすがしい気分が満喫できます。起きて
すぐに学校や会社に行ったり、朝食を抜いたりせず、少し早起きして景色をながめながら、
朝の散歩を楽しみ、おいしく朝食をとってみてはいかがですか。親指を4本指で押さえ込み、
その手を後ろに大きく振り、その反動を利用して前に振り出す。足は、親指を中心として力
強く大股で踏み出す。この歩き方で目標一日13,000歩! 「歩く」ことの楽しさを味わい、
健康になりましょう。
(第15号:1997.6.2)
6.体も心も「ストレッチ運動」で和らげよう
現代はストレス社会です。一見精神的なものだと思われがちですが、実際は体が緊張感を
与えられることによって、精神的にストレスがたまるのです。「ストレッチ」とは筋肉の緊張を
取り除いて、気持ち良く伸ばすこと。つまり「ストレッチ」には「引き伸ばす」「引っ張る」という
意味があります。
間接をまたいでついている筋肉を進展する運動のことを、「ストレッチ」と言います。筋肉をこ
れ以上進展できそうにないという限界近くまで、目的とする筋肉を引き伸ばしていき、その
ままジッと静止します。10秒くらいから開始して、運動になれるにつれて時間を延長してい
く方法があります。星の丘の入院患者さんも、毎日ストレッチ運動をしています。みなさん
も一度試してみては、いかがですか。
(第16号:1997.7.1)
7.ストレス対策
心身のストレスや過労は、アトピーの症状を悪化させやすく、自律神経の機能も低下させ
ます。ですから、まず勉強や仕事の量を適正にし、休養・睡眠を十分にとることが大切です。
勉強や仕事は可能な限り1日8時間以内にして過労を避け、夜更かしをせず、整った生活リ
ズムを作ります。
睡眠は個人差がありますが、6〜8時間は必要です(朝スッキリ目覚められるのがよい)。
勉強や仕事中は、ストレスをためないようにすることが大切で、一時間続けたら10分程度手
を休めて、できれば気分転換の体操をしてください(逆立ちも効果的)。
座りっぱなしを続けるのも悪影響があるので、こまめに立ち上がるようにします。最近では、
勉強部屋や職場を気分が落ち着く緑色系にしたり、静かな音楽を流して疲労を少なくする
工夫や、鎮静作用のある香り(ラベンダー・カモミール・サンダルウッドなど)を流して、ストレ
スをためないようにする試みもあります。
(第18号:1997.9.23)
アトピー性皮膚炎は皮膚を清潔にしたり、刺激から守るだけではダメで、心身をリラックスさ
せてストレスを減らさないと良くなっていかないことは、皆さんもご存知だと思います。
ストレスで疲れた体を休める方法として、散歩などをして気分をすっきりさせ、深い睡眠を
とるのも良いでしょう。ストレスを引きずったままベッドに入ると、睡眠時間が足りていても本
当の休息にはなりません。夜は家で十分にリラックスし、寝る前は30分ほど静かな音楽を
聴くのも良いでしょう。
簡単にできるストレス解消法に、腹式呼吸があります。「あ、イライラしてきたな」と思ったら、
お腹をふくらませて息を吸い、静かにゆっくりと吐くのです。肩の力が自然に抜けてゆくのが
わかります。
重症のアトピー患者さんは、入院することも良いでしょう。病院は完全に世間から隔絶され
た世界で、安静を保てるからです。精神的にも肉体的にも、刺激が少ないことを安静という
のです。それから、海外旅行をするのもいいかもしれません。何日間かの短いスケジュール
ではなく、二週間以上の日程でのんびり過ごし、日本での日常を忘れるのです。親と一緒
に過ごしている患者さんは、一人暮らしをしたり、結婚して悪化した人は、夫婦の寝室を別
にしてみるのも方法です。
ストレス管理のコツは、ストレスが皮膚に出る前に早めに手を打つこと。これができると、
アトピーも軽くコントロールできるようになります。
(第20号:1998.1.5)
8.アトピー性皮膚炎と、自律神経失調症
アトピー患者さんの中で、自律神経失調症と言われたことのある人は多いかと思います。
いつも手足が冷たい、肩こり、疲れ易い、だるい、のぼせる、血圧が低い、便秘、下痢、
集中力の低下など、内臓の病気を思わせる症状があるのに、検査では異常なし。これは、
自律神経のバランスが乱れている現象と思われます。
心と体は自律神経を介して、密接につながっています。緊張すると手が冷たくなり、リラック
スすると手は温かくなります。これは精神的に緊張した時は血管が収縮して血流が悪くなり
、手が冷たくなります。リラックスすると血管が拡張して血の巡りが良くなり、温かくなるの
です。このように精神的ストレスは、体のあらゆる所に影響を与え、様々な症状を起こす原
因になっているのです。
自律神経は内臓や筋肉、血液などの体の内部の働きを調整する神経で、意思とは関係なく
働き、「交感神経」と「副交感神経」があります。交感神経はストレスが生じた時に優位に
働き、副交感神経はリラックスした時に優位に働きます。この二つは必要に応じてバランス
よく働きますが、ストレスの多い現代人は、どうしても交感神経の働く時間が長くなりがちで
す。そのため、体の緊張状態が長引いてしまい、交感・副交感神経のバランスがうまく保て
なくなり、様々な体の不調へつながっていくのです。
アトピー患者はストレスに弱い人が多く、それが自律神経失調症となるわけです。原因とし
ては体質に加え、心因、生活環境、不摂生などが複雑に関係して起こります。治療はまず
医師の診察を受け、症状を起こす病気がないことを確かめることが大切です。
岡部美津子(第24号:1998.7.31)
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