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矢倉 子育てを考える

岡部先生がアトピーを通して、子育てを考えました。






●なぜ掻くかを考えよう

掻いている子供を見ると、たいていの母親は「掻くな」と言ってしまいます。これで本当に掻 くのをやめさせる効果があるのでしょうか。いっとき掻くのをやめても、多分また掻くと思います。
掻いている子供に「掻くな」と言うことは、泣いている赤ちゃんに「泣くな」と言っている ようなものです。普通のお母さんであれば、「おしめが濡れていないかな? おっぱ いを飲みたいのかな? 眠いのかな?」と考えるはずです。掻いている子供を見た時、 何でこの子はこんなに掻くのだろうかと考えて欲しいと思います。どうもかゆみは、イ ライラや怒りと関係ありそうです。子供がかゆがっている時、「この子は何にイライラし ているのだろうか」と考えてみてください。何かヒントが見つかるはずです。
(第14号:1997.5.1)


●のんびりしよう

お母さんの口癖の中で一番多いのに、「早くしなさい!」というのがあります。「早く風呂に 入りなさい、早く食べなさい、早く寝なさい、早く宿題をしたら?、早くしないと学校に遅れる よ!」などと言って、子供を急がす。母親は当然のように子供に言いますが、この言葉を言 われた子供は多分イライラしていると思います。
子供にはそれぞれ自分のペースがあります。アトピーの子供は、大体のんびりした人が多 いのです。母親の早く行動して欲しいという気持ちは良くわかりますが、この言葉を言った 時、子供がどんな表情をするのかよく観察して下さい。子供が嫌な顔をした時は、自分が子 供を不必要に急がせているんだなと、ちょっと立ち止まって考えて下さい。このせっかちな時 代だからこそ、もっとのんびりしていいのではないでしょうか。たまには遅刻させて、失敗の 経験をさせて下さい。
(第15号:1997.6.2)


●手本を示そう

お母さんがいつも気にとめていることに、子供に勉強して欲しい、ということがあります。この 学歴社会で、子供に少しでも良い点数をとらせたい。そこで親は子供に「勉強しなさい」とか 「宿題は」と言ってしまいます。本当にこれで良いのでしょうか?
子供は親の後姿を見て育ちます。そうすると、子供に勉強させたい時は、親が手本を示す 必要があります。例えばテレビを消して親が勉強すれば、子供は自然と勉強するようになる ものです。親が日記を書いたり、出し忘れていた手紙を書いたり、母親であれば家計簿をつ けたり縫い物をしたりできるはずです。そうすると子供は自然と勉強するようになります。 他人から強制されてやらされた勉強は、する振りは見せますが、なかなか身につきません。 子供に勉強させたい時は、どうか手本を示して下さい。
(第16号:1997.7.1)


●スキンシップ(1)

掻いている人を見ると、我々はどんな気持になるでしょうか? たいてい掻いている人が気 になり、注目すると思います。そして「かわいそう」という気持がわくのではないでしょうか。 掻破という行為は、他人の注目を集めます。
アトピーで掻いている本人は気がついていないかもしれませんが、掻くことによって「私の 方を振り向いて欲しい」、「私を注目して」、「かまって欲しい」というサインを、親や周りの人 に示しているように思います。アトピー患者のいる家庭では患者が掻き始めたら、そばに行 って掻いている所をなでたり、話しかけたり、抱っこしたり、一緒に買い物に行ったりして、 患者との接触やスキンシップを増やすように心がけてみて下さい。そうすると、きっと患者 に何か良い変化が出てくると思います。
(第17号:1997.8.18)


●スキンシップ(2)

今回はスキンシップについて、具体的にどのようなことをするかお話しします。抱っこをする、 抱きしめる、かゆい所をなでる、ほっぺにキスをする、おんぶをする(仕事中もできればおん ぶをする)、そばにいてあげる、耳掃除をする、母のそばに寝せる、絵本を読んであげる、 童謡を一緒に歌う、お風呂に一緒に入る、手をつなぐ、買い物に一緒に行く、浴衣を着て 一緒に祭りに行く、母のリラックスのために実家に帰る、父に協力してもらう(母の心を安定 させるために)、父と母が仲良くするなどをしてください。
子供が小さい時にこのようなスキンシップが足りないと、思春期になってから「思い残し症 候群」としての、拒食症やアトピー性皮膚炎がおこることが知られています。
(第18号:1997.9.23)


●第一子がアトピーに?

最近アトピーに関する面白い記事を読みました。ある調査によると、アトピー患者の兄弟姉 妹の関係を調べたところ、圧倒的に親にとって最初の子供である第一子に多いらしいので す。もし他のきょうだいにアトピーがあっても軽く、重症なアトピーはあきらかに第一子に多 いというのです。これは私の永年の経験でも、そのような印象を持っていました。
発表した先生によると、他のきょうだいに対する嫉妬ややきもちがアトピーの発症や悪化の 原因になりうる可能性があるとのことです。私が今迄この新聞で述べてきたように、かゆみ は母親にかまって欲しいとか、スキンシップを求めるサインです。最初の子供が弟や妹に嫉 妬を感じた時、母親の注目を集めるために掻くことが考えられます。なお、当院の統計の結 果では、第一子にアトピーが多いということは否定されました。
(第19号:1997.10.30)


●親離れ、子離れ

20歳前後のアトピーの入院患者をみて感じるのは、親離れ・子離れの問題が根底にあるよ うに思います。長年悩んできたアトピーのおかげで、親はどうしても子供に色々心配しすぎ てしまいます。ところが子供の方は、以前からうるさく感じていたりします。親の方でもかな り「心配性だな」と気づいていますが、なかなか今迄のやり方を変えられません。
そういう意味でも一回子供を入院させて「かわいい子には旅をさせ」、親元から離してみて はどうでしょうか。親が子離れできない理由には、次のようなことが考えられます。子供の アトピーを治すのを生きがいにしてきた。本当は夫との関係がしっくりいっていないが、その イライラを子供に向けて解消していた。さみしさの解消を子供に求めていた(人間の根源に はさみしさがある)。今迄日常の生活に追われて自分の生きがい探しをしてこなかった、な ど。
アトピーをきっかけに、親子とも自分の心をもう一度、見つめてみましょう。
(第21号:1998.2.7)


●親子のギャップ

最近、親と子供の間のギャップについて考えさせられる親子が、外来に来ました。私はそ の子供のかゆいアトピーを見て、ステロイド外用剤(以後ス外と略)を使うことを、親に勧めま した。ところが親は、ス外を使うことを拒否します。こちらがいくら説明しても納得してもらえ ません。親の方がス外に対して、「ステロイドは怖い!!」という間違ったイメージを持ってい るようです。
この時私は、子供不在(子供が置き去りにされている)の思いを強くしました。ス外は使い 方が問題なのであって、上手に使えばこれほど有効な塗り薬はありません。子供は、かゆ みのために辛い思いをしています。子供はス外を使って欲しいはずです。ところが親の方 は、怖いイメージからス外を使おうとしません。これで良いのでしょうか?
(第22号:1998.3.27)


●天からの預かりもの

子供は自分の所有物のように考えて、子育てしている人がほとんどだと思います。しかし 最近、私は次のように考えています。子供は天からの預かりものではないでしょうか。天か らの預かりものであれば、おのずから子供への対応が違って来ると思います。
最近、次のような親子が来ました。アトピー性皮膚炎に良かれと思って、母親はその子供を 温泉に連れて行きました。温泉に入っている間は良かったのですが、温泉から帰って来たら またかゆみが増してきました。母親はわが子に良かれと思って温泉に連れていっています が、子供は望んでいなかったのではないでしょうか? 同じ年代の子供同士で遊びたかっ たのに。
母親の操り人形では、子供の主体性がなくなります。子供が今、何をして欲しいのかをちょ っと考えてみては。周りの家族が子供のかゆみに神経質になりすぎて、かえって悪化させ ていることもあります。
(第23号:1998.4.20)


●親が口うるさい〜悪循環の始まり

最近アトピー性皮膚炎と、親の口うるささとの間に、関連があるような気がしています。親が 口うるさいと、子供のアトピーが悪化する例が多いのです。親は子供に良かれと思って口う るさくなるのですが、色々な状況がかえて悪化するように思います。悪循環の始まりなの です。親の100%正しい子供への忠告は、役に立たないことが多いのです。
子育ての基本として、アトピーが多少あっても子供が元気で機嫌が良い状態が大事です。 例えばアレルギーの検査をして、卵と牛乳で陽性が出たとします。しかし採血などの検査で 陽性だからといって、すぐにアトピーの原因だとは限らないのです。その陽性に出た食物が 原因だと確認するためには、次のようなことが必要になります。まず食物日誌をつけて、皮 疹とその食物との間にかなりの関連が見つかり、さらにその食物を完全に除去した時にアト ピーが良くなり、また食べ始めた時にあきらかにアトピーが悪化したという、除去試験・負荷 試験をやらないと本当のことはわからないのです。ところが主に小児科の先生は、採血や 皮内テストの陽性だけで、すぐに患者にその陽性の食物を除去するように指示をします。 そうするとどうしても母親は、子供にいちいち「それには卵が入っているから、食べられない んじゃない!」と子供に口うるさくなります。子供にとっては食物アレルギーのことよりも、母 親が口うるさいことがストレスになっていることが多いようです。
他にハウスダストやダニの場合にも同じことが言えます。ダニが原因だと考えると、子供に 部屋をそうじさせるために口うるさくなります。私の今までの経験では、ハウスダストや食物 がアトピーの原因になっていたことはほとんどありません。これらはどちらかと言うと、喘息と の関連が強いと思っています。だから母親は、アレルギーに対してそれほど神経質になる 必要はないように思います。それよりも母親が早く子供のアトピーを治したいとあせって口う るさく言って、子供にストレスを与える方がずっと弊害が強いと思っています。
(第27号:1997.11.16)







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