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矢倉 アトピーの漢方

「キラキラ」に掲載された、漢方に関する記事です。

1.岡部先生の漢方薬講座
2.漢方薬の煎じ方


1.岡部先生の漢方薬講座

●胃気について

これからアトピーの漢方治療についてお話ししていきます。
まずアトピーでは胃腸の弱い人が多いのです。普通は大食いで早食いの人が多いのです が、時には小食の人もいます。よくお腹が痛くなったり、便秘や下痢しやすく、時には便秘と 下痢が交代できたり、お腹が張るなどに悩まされたりします。牛乳を飲むと下痢しやすい 人もいます。
漢方では胃について、次のように考えます。まず食べたものを消化してエネルギー(胃気) に変えます。胃気は全身に配られますが、同時に出過ぎないように守られる必要がありま す。例えば外で働く男性と、家庭を守る女性か。アトピー患者では、胃気を守る働きが弱っ ているのです。そこで胃気が出過ぎるのを守るために「甘草」、時には「人参」という生薬を 使います。
(第2号:1996.4.6)

●かゆみについて

かゆみについての漢方薬の考え方について、お話しします。漢方では、皮膚において気や 血(≒血液)や津液(水分)がスムーズに流れないで滞ると、かゆみを生じます。交通渋滞 を考えると分かり易いと思います。
アトピーでは特に気の流れと津液の流れがスムーズでないようです。津液の流れがスムー ズでないと、ある所までは水分が多くてむくみを生じ、ある所からは逆に水分が少なくてひ でりのように皮膚が乾燥して来ます。夏のダムを想像して頂ければ分かり易いと思います。
かゆみ止めの生薬としては、防風、苦参、紫根、蘇木、白し、茵ちん蒿、しつ藜子、蝉退、 山梔子、サフランなどがあります。患者さんの状況によって、どの生薬を使うかを決めます。
(第3号:1996.5.20)


●なぜ食前に飲むか

今回はなぜ漢方薬は食前(空腹時)に飲むかについて、お話します。お腹の空いている時 の方が、漢方薬の吸収が良いからです。食直後に漢方薬を飲みますと、食事で漢方薬が 薄まって効果が弱まります。
食前に飲むのを忘れた人は、食後すぐに飲まないで、食後約1時間後のお腹が空いた食間 に服用してください。
たまに食前に漢方薬を飲むと、漢方薬だけでお腹が一杯になって食べられないと訴える人 がいます。この時は無理に食前に飲まないで、食間に飲むか、食事の1時間前に飲むこと を勧めます。
他の医師から別の薬(西洋薬)をもらっているが、漢方薬と西洋薬を一緒に飲んでよいかと 心配する人がいます。一般的には一緒に服用してもかまいませんが、時間をずらして服用 しましょう。
(第4号:1996.7.1)


●漢方の味と働き(1)

今回は漢方の味と働きについてお話します。
苦い味は、熱や赤味を取って、じくじくを乾かします。ほとんどのアトピーの人は皮膚が赤くな って、じくじくしていますら、苦い薬が入ります。また苦い薬は便の通りを良くし、便秘を解消し てくれます。また、ほてりやのぼせも取ってくれます。
辛い味は、体を温め、気のめぐりを良くし元気を出させます。ニンニクを好きな人は、冷え性の 人が多いようです。
甘い味は体の衰えを補い、緊張を緩和してくれます。旅先のホテルのテーブルにおかれた甘 いお菓子は、旅の疲れを取ってくれます。疲れている時は、甘い物が欲しくなるものです。ま た、甘い味は痛みを緩和したり、苦い薬を飲みやすくする働きもあります。
(第5号:1996.8.1)


●漢方の味と働き(2)

今回も漢方の味の続きです。
アトピーでは砂糖などの甘いものを、できるだけ控えるようにしてもらいます。その理由は、甘 いものをとりすぎると、体の中の湿(じくじく)を増し、怒りっぽくさせます。また砂糖は体の中 のビタミンやカルシウムを消耗させてしまうのです。だからアイスクリーム、チョコレート、ケー キなどの甘いものはとりすぎないようにして下さい。
酸っぱい味は、出過ぎるのを収める働きがあります。例えば寝汗、長すぎる下痢や尿が出過 ぎるなど。アトピーでは胆気(決断する気)を守る働きが弱っているので、五味子という酸っぱ い生薬をよく使います。時には、酸っぱい梅干を食べることを勧めます。
塩っぱい味は、固いものを和らげ、乾燥を潤し、便秘を治す作用があります。
(第6号:1996.9.2)


●痰飲について

今回は痰飲(たんいん)についてお話しします。
痰飲というのは漢方の言葉で、どろどろして汚く、中に固まりのあるものを言います。さらさ らしてきれいで滞らずに流れているものを、漢方では津液(しんえき)と言います。この一年 間の経験からアトピーは、皮膚の痰飲病であることが分かってきました。皮膚の深い所( 肌=き)に汚い痰飲がありますから、アトピーではかゆく、じくじくし、時にはかさかさします。 肌の痰飲は、体温やストレスなどで熱せられ、それが赤味となります。
肌に痰飲がなぜできるのでしょうか。西洋型の食事・運動不足・ストレス(体の疲れと気疲 れ)がその原因です。肌と胃腸とは密接につながっているので、アトピーは胃腸と深い関係 があるのです。皮膚の痰飲病を治すには、漢方薬(煎薬)が最適のようです。
(第7号:1996.10.1)


●環境汚染

前回にアトピーの原因は、皮膚の痰飲病であるとお話しました。その原因として、飽食(西 洋型の食事)、運動不足、ストレス(体の疲れと気疲れ)だとお話ししましたが、今回は第 四の原因として環境汚染を追加します。
食物中の残留農薬・食品添加物・水道水の塩素やトリハロメタンなど、我々人間は便利さ と引き換えに、化学物質が世の中にあふれるようになって、かえって命を縮めたり、アトピ ーのような難病の発生をもたらしています。
人間は自分の体の中に入ってきた毒物を、次のように処理をします。有害なものは尿・便・ 汗・垢などから排泄します。皮膚は腎臓と同じように、体内の要らなくなったものを排出す る役目をもっています。アトピーでは、汗をかくとかゆがる人が多いのですが、汗から排出 している毒のためにかゆいのかもしれません。
(第8号:1996.11.19)


●なぜ漢方薬か

当院では、アトピーの治療に漢方薬―特に煎じ薬をメインにしています。今回は、アトピー の治療になぜ漢方薬なのかをお話します。アトピーの4つの原因は環境汚染・飽食・運動 不足・ストレスです。例えば飽食や環境汚染の対策として、添加物の入らない自然食品を 購入して、玄米を主体にした和食による食事療法の実施によって、アトピーが軽快する迄に は数ヶ月以上の期間が必要なのです。また赤味やかゆみを楽にするステロイドは、あくま で対症療法であって根本治療ではありません。
ところが漢方薬は、根本原因である胃腸の働きを薬草で正常に戻し、かゆみ・赤味・じくじく ・かさかさなどの皮膚の症状も薬草によって楽にすることができます。そのためには、数種 類の薬草を患者さんの症状に合わせてブレンドします。
漢方薬の効果は、早い人で数日であらわれます。このような今迄の経験から、私は漢方薬 をアトピーの治療の主体にしている訳です。
(第9号:1996.12.9)


●気滞(きたい)について

気滞は、気が滞る、気がスムーズに流れないことを意味します。「気」は元気・活気の気で、 本来は体内をスムーズに流れる生命エネルギーを言います。
ストレスと食べ過ぎや飽食は気滞の原因になります。気滞になると次のような症状が出て きます。イライラ、怒りっぽい、ため息が多い、抑うつ感、お腹が張る(排ガスやげっぷで一 時的に楽になる)、排便がすっきり行かない、胸がつまる、生理前に胸が張る、不眠、食欲 不振、生理不順や生理痛、目が疲れなどです。
気滞になると、胃腸の働きが低下し、肝臓の働きを弱め、また血の巡りも悪くします。アトピ ーの患者さんにはほとんどの人が気滞を伴っています。このような気滞を良くする生薬には、 枳実・香附子・厚朴・陳皮・檳榔子・木香・烏薬・縮砂などがあります。私は、アトピーの患者 さんには、主に枳実や香附子を使っています。
(第11号:1997.2.3)


●血滞(けったい)について

血滞は、血が滞る・血液の流れが悪くなった状態を意味します。血滞はまた「お血」(お=病 だれに於)・古血(ふるち)とも言われています。血滞になると次のような症状が出てきます。 皮膚が硬くなりかさかさしてくる、しみやそばかすがある、舌の裏側の静脈がはっきり見え る、胸に刺すような痛みや締めつけられるような痛みがある。月経の色が黒ずんだり、塊(か たまり)が混じる。痔がある、お腹やふくらはぎの静脈が浮き出ている。
このような血滞をよくする生薬には、牡丹皮・桃仁・芍薬・当帰・川きゅう・莪朮・益母草・延 胡索・牛膝・蘇木などがあります。アトピー性皮膚炎の患者さんで、長い間患っている人は 血滞を合併しているので、血の巡りを良くする生薬を必ず使います。皮膚の血行を良くする ために、毎日、運動を欠かさずやって下さい。散歩やストレッチ体操がお勧めです。
(第12号:1997.3.6)


●水滞(すいたい)について

水滞は、水が滞っている状態です。液体成分(水分・電解質・栄養分その他)が、正常な代 謝経路からはずれて貯留しています。アトピーではよく顔がむくんだり、皮疹がじくくしている 人が多いのですが、これは漢方的には、水滞の状態を反映したものです。
一般的に言って水滞は、胃腸機能が弱っている時に起こりやすくなります。次のような症状 の時は、水滞を疑います。経過が長くてなかなか治らない、四肢や体がだるい、頭が重い、 体のむくみ、鼻水や喀痰や局所の滲出液、口は乾くが水分が欲しくない、めまいや乗り物 酔い、吐き気や下痢などの胃腸障害、尿量が少ない、雨の日に症状が悪化する。このよう な水滞の時、漢方では、次のような生薬を使います。白朮・茯苓・沢瀉・猪苓・よく苡仁・防 已・車前子・檳榔子・威霊仙などです。どこに水滞があるかで、これらの生薬を使い分けます。
(第13号:1997.4.16)


2.漢方薬の煎じ方

1)一日分(一袋)を土瓶、またはアルミのやかんに入れて下さい。
※漢方薬(生薬)にはタンニンを含有するものが多く、鉄器の場合には、鉄さびを起こして沈 殿するなど、薬に影響があるので使用しないで下さい。

2)約800mlの水を入れ、ふたを開けたまま沸騰後、とろ火で20〜25分煎じます。約250ml になるまで煮つめて下さい。250mlに足りない場合、次回から水の量を増やすなどして調節 して下さい。


生薬のグラム水の目安
100g600〜800ml
200g1,000ml
300g1,200ml


3)煎じた薬が一日分です。できあがったら早めに、清潔な容器に移しかえて下さい。 そのままにしておくと、袋に吸い込まれて量が減ります。煎じ薬は暖かいまま飲むのが 効果的ですが、飲みにくい時は冷めてからでも結構です。
後入れの小袋がある場合、大袋を取り出さないで最後の5分間に煎じてください。 (煎じ始めて25分経ってから入れて下さい)

4)服用時間は一日2回、食間(空腹の時)です。

5)冷蔵庫で冷まさずに涼しい所に置いて、常温で飲んでください。真夏だけは冷蔵庫 に入れても、飲む時は暖めて飲んだ方が効果的です。
(第12号:1997.3.6)




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