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1.養生のすすめ
アトピーは慢性の病気であり、また決定版と言えるような治療法はあ
りません。ですから治療と同じくらい、自分をいたわり、生活を整える
「養生」が意味を持ちます。養生とは身体だけではなく、心も含めた考
え方です。今よりも自分の身体が心地好いと感じられるような、そして
気持が生き生きする生活を目指します。その際に頼りになるのは、自
分の身体の感覚です。身体がこわばって身体感覚が鈍くなっている人
は、自分の身体の言い分を聴き取ることから始めましょう。
家を建てる時に、見える部分に傷がつかないように保護することを養
生と言います。ただし人間の場合は、単に刺激から保護されるのは
養生にはなりません。たとえば老人が腰が痛くなって昼間から寝るよ
うになると、さらに衰えることはあっても回復することはまずありません。
運動と休養の両方が必要なのです。

2.本来の生活に
アトピーはいわゆる先進国、とりわけ日本で蔓延している病気です。そ
の原因については、色々な人が色々なことを言っており、定説となって
いるものはありません。しかし「養生=生活のあり方」という点から見る
と、私たちが加速度的に発展した文明に追いついていけない状態と考
えることもできます。
人類の長い歴史からみたら、原始的な生活をしていた時代の方がずっ
と長かったのです。たとえば甘いものや脂っこいものなど、栄養価の高
いものを「美味しい」と感じるのは、食料が限られた原始的な生活では、
身体を維持するために必要な感覚だったのでしょう。しかし食物が豊富
な社会では肥満や成人病を招いてしまいます。
いつ外敵に襲われるかわからないような生活であれば、夜には月が
出ていたり火が燃えていれば、安心できたはずです。人間は夜が明る
いと嬉しいので、電灯を点けて夜も昼と同じように活動するようになり
ました。その結果、身体の調子を崩してまで働いたり、夜更かしをする
人も出てきました。文明で傷ついた身体は、文明から遠ざかることで
癒されるのではないでしょうか。今さら縄文時代の人々と同じような暮
らしをするわけにはいきませんが、少なくともアトピーが蔓延する前の
暮らしに近づけることはできるはずです。
1.規則正しい生活をしているか
2.十分な睡眠をとっているか
3.良い食生活をしているか(和食中心、間食をしない)
4.運動しているか、身体はこわばっていないか
などの点から、生活を見直す必要があるでしょう。ここにあげた項目は、
自己治癒力に関連しています。生活を整えずに治療に頼っても、回復
は難しいと思います。外来では症状のコントロールが難しかった患者
さんが入院して良くなるのは、このような生活が整っていく面が大きい
と思います。まったく陳腐な話のように思われるかもしれませんが、
陳腐かどうかは実行してみればわかります。疲れがたまっていると思
ったら、毎晩9時に寝てみましょう。一週間もすれば、身体が軽くなって
いくのが感じられるはずです。

3.アトピー・サイクル
病気を「早く良くしたい」と思うのはもっともなことですが、アトピーの回復
にはマイナスに働く場合があります。それはいくら良くなるための努力を
しても、自分が思い描いたようには良くならないからです。少しは良くな
るかもしれませんが、必ず頭打ちになってしまいます。
「いくら頑張ってもだめなのか」と気持が落ち込むと、症状も悪化します。
少し良くなって元気が出てくると、「またやってみよう」と気分も症状も上
向きになる。このくり返しで、アトピーの症状と気分が一緒になって上下
する波が生じてきます。この現象を「アトピー・サイクル」と呼ぶことにし
ましょう。
アトピー・サイクルができると、症状が少し良くなると気分も良くなり、悪く
なると落ち込んでしまいます。これは言ってみれば自分の気持までアト
ピーに支配されていることですから、イライラがこうじていったり、疲れが
たまってうつ状態になってしまうことがあります。
この現象が、家族にも出ることがあります。患者さんの症状を見て一喜
一憂してしまい、冷静さを失ってしまいます。あまりにも症状を観察され
たり、いちいちアトピーのことで口出しされることは、実は患者さんにとっ
ては一番嫌なことです。家の中でいさかいが絶えなくなったり、家族も
疲れ果ててうつ状態になります。
そもそもが、「一日も早く治したい」という気持がアトピー・サイクルの始
まりです。「治す」よりは「ひどくしない」で気長につきあう方が、結果的
には早道です。低空飛行でも墜落するよりはまし。どう養生していれば
ひどくしないで済むのか、自分の身体でつかみとることが肝要でしょう。

4.アトピーの5段階
ひどいアトピーとはどのような状態を言うのでしょうか。ひどくないアトピ
ーや、あるいは「治った」状態をどう定義するのでしょうか。皮膚症状の
医学的な分類ではなく、生活面や心理面を含めた5段階を考えてみま
した。
各段階の間にある▼と▽の項目は、主な悪化因子として考えられること
です。▼は身体的、▽は心理的な要因です。段階が進むと、前段階で
の悪化因子も足し算されていきます。例えば、[4]段階にある人は、[0]
から[4]までの全ての悪化因子が症状の波に関与してきます。
【アトピーの5段階】
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[0]−アトピーがない状態
皮膚のトラブルを全く感じないで良い。見た目もつるつる。
▼アトピー体質
[1]−落ち着いた状態
皮膚がかさついたり、時折かゆくなったりするが、ほとんど治療を受けな
いで生活できる。アトピーを意識しないで良い。
▼アレルギー反応、生活環境、気候、疲労
[2]−症状が出る状態
かゆみや湿疹が出るが、症状をコントロールして普通の生活を送ること
ができる。
▼無理な生活、不適切な治療
▽人生の問題、人間関係のストレス、アトピーのストレス
[3]−不安定な状態
症状のコントロールがうまくいかない。強いかゆみのために、眠れない
こともある。気分的にもイライラしたり、落ち込んだりする。家族と衝突
することもある。
▼ステロイドの離脱、疲労の蓄積
▽神経症、パーソナリティ構造、うつ状態
[4]−危機的な状態
身体症状が悪化して、日常生活もままならない。
生活が不規則になり、昼夜逆転することもある。
気分的な落ち込みが激しく、時には自殺を考える。
学校や会社に行かずに引きこもったり、やめてしまう。
身体的、心理的、社会的にアトピーに支配される。
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上の図式は、私一人の経験に裏づけられたものでしかありません。しか
しこう考えてみると、子どもと大人のアトピーの違いに、説明がつくように
思います。大人は難治化することが多いのですが、それは子どもよりも
生活が複雑になって、ストレスや性格要因もからんでくるからでしょう。
私が治った状態と考えるのは、[1]の状態です。いわゆる乾燥肌の人と
いうのは、こんな感じではないでしょうか。ひどいアトピーとは、[4]の状
態ですが、[3]が長くなると疲労が蓄積して[4]になってしまうこともあるので、注意が必要です。
アトピーで入院する人はほどんどが[4]の状態であるか、あるいは[4]
の経験があるようです。[3]や[4]になってしまったら、まず[2]にするこ
とを考えましょう。いきなり[0]や[1]に持っていこうとしても、焦りの感情
に圧倒されるだけです。とにかく[2]の状態を長く保つことが、次のステ
ップにつながって行くと思います。[3]や[4]の状態になったことがある人
は、心理的な要因が関与していないか、チェックしてみる必要があるでしょう。

5.かゆみ対策
●掻くのは我慢できるか
アトピーは、掻かなければ良くなります。かゆくなったらどうしたら良いの
か――だれでもすぐに思いつくのが、「我慢」です。要するに掻かないよ
うに、掻かないようにと、我慢すれば良いのです。しかしこれは他人が想
像するよりも、はるかに困難なことです。
思春期を過ぎて、我慢する意義を理解して行動をコントロールできる人
ならいざ知らず、幼稚園児や小学生には無理なことでしょう。
ですから、アトピーの家族の方は「掻くな」と言わない方が良いのです。
ボリボリと音をたてて掻いている姿を見ると、つい言いたくなるのもわか
りますが、ご本人はそう言われるとますます掻きむしりたくなります。
どのみち掻かないように四六時中見張っていることもできないのです
から、掻く、掻かないは本人に任せるしかありません。
●かゆみを抑える
「かゆみを抑える」ための薬、いわゆるかゆみ止め(抗ヒスタミン剤や
抗アレルギー剤)は何種類も出ているので、皮膚科で出してもらった
方も多いと思います。また夜間にかゆくて眠れない場合は、睡眠薬が
有効なこともあるようです。また保冷剤(いわゆるアイスノン、ソフトタイプ
がおすすめです)で患部を冷やしたり、逆に温タオルで暖めると、かゆ
みが治まることがあるようです。
●ダメージを減らす工夫
掻いた時になるべく皮膚のダメージを少なくする工夫はあり得ると思い
ます。
1.つめを切ってヤスリで丸める
つめが伸び放題になっていると、垢にバイキンがたまります。汚い指で
掻くのは、傷口にバイキンをすり込むようなものです。爪をきれいに丸
めれば、キズもつきにくくなります。
2.寝る時に綿の手袋をする
小児科で「筒状のカバーを腕にかぶせて寝る」というのがありましたが、
色々なバージョンがあると思います。ただし、寝ている間に外してしまう
可能性もあり。
3.掻くための道具
「ごくらく棒」という商品名だったと思いますが、ヘアブラシ状の道具があ
りました。楊枝のような棒が柄から出ていて、先端が球状になっていま
す。爪でひっかくよりも良かろうという理屈ですが、うちの入院患者さん
には人気がなくてすたれています。道具で掻いても、気持が良くないの
でしょう。
4.保護する
ひどくなっている箇所をこれ以上悪くしないために、寝る前に包帯でグル
グル巻きにしたりして、保護します。これも、外してしまえば意味はあり
ません。
5.優しく掻く
ほじくったり、爪を立ててひっかいたりしないで、優しく掻くようにします。
自分を守ってくれている皮膚をいたわる気持ちで、優しく掻いてあげま
しょう。
これらはさしあたりの対応ですが、役に立つようなら続けれてみれば良
いでしょう。しかし、もう少し根本的な解決はないものでしょうか。
●掻破パターンからの脱却
それは掻破パターンを減らして、
受容・表出パターンを少しずつ増やし
てゆくことだろうと思います。掻破パターンの最大の特徴は、ストレスが
言語化されないで、掻き壊しにつながることです。
心身症パターンも同じく言語化されないのですが、自律神経系の反応を
引き起こすと考えていました。心身症者に見られがちな感情表現の乏し
さを、精神分析医のシフオニスは「アレキシサイミア」(失感情症との訳
語もありますが、本来は病気でも症状でもありません)と名づけました。
成人アトピーの人は、気持が優しくて繊細な人が多いように感じます。
もちろんそれが美点になっている人もいるのですが、見方を変えると
堂々と自己主張する図太さや、伸び伸びした感情表現に欠けるというこ
とでもあります。
私は掻破パターンから脱け出すには、「自分を好きになる」ことが大事な
ように思います。自分が好きでなかったら、人間関係を作っていったり、
感情を表現することは難しいですから。

6.腹式呼吸でリラックス
●複式呼吸のすすめ
心身を整える方法は色々ありますが、ヨーガや気功など呼吸法に着目
しているものが多いのはご存知と思います。腹式呼吸は管楽器の演
奏などにも使われます。何も意識しなければ胸式呼吸をしている人が
多いのですが、ふだんから腹式呼吸をしていると気持が落ち着いて、
小さなことで動揺しないで良くなるように思います。
また腹式呼吸を用いて瞑想をすると、気持の切り替えがうまくできたり、
肩に入った力を抜けるようになります。これはあくまで私の体験なので、
興味のある方はまずやってみてください。
そんなに難しいことではありません。
以下に紹介する方法は、満腹時を避けて、なるべく静かな所で行うこと
をお勧めします。テレビがついていたりすると、気が散ってしまうので。
まず仰向けになりましょう。お腹の上に両手を重ねておきます。
吐く時は口から、吸う時は鼻からすると、感じがつかみやすいでしょう。
お腹の動きに注目します。
・吐く時:お腹が引っ込む
・吸う時:お腹がふくらむ
深呼吸をあまり続けていると、過呼吸になってしまいますから、
適度に休みを入れて下さい。
●丹田呼吸
「丹田呼吸」を新聞で見て、自分でもやってみました。
これはリラクセーションとしてもなかなか良いし、腹式呼吸がしっ
かり身につくように思います。呼吸では「しっかり吐く」ことが大事
なのですね。
(1)2秒で吸う
(2)3秒止める
(3)15秒かけて吐く
のくり返しです。一回に20秒かけて、腹式呼吸をすることになります。
●瞑想法
私にとって瞑想とは、一時的にストレスから自由になって、自分自身に
心地好く集中する体験です。別に哲学的なことを考えたり、神秘的な体
験を得るわけではありません。
(1)椅子に腰掛けるか、あぐら、正座などの姿勢で行います。
頭から足にかけて、身体の余分な力を抜きます。
(2)目を閉じて、腹式呼吸をします。
(3)お腹の感じに注目します。お腹がふくらんだり、
引っ込んだりするのを、感じ取るように。
(4)何か別のことが思い浮かんだら、またお腹の感じにもどります。
これで10分ほど行います。20分できれば、なお良いでしょう。
瞑想をした後、自分の身体がどうなっているか、感じ取って見ましょう。
上達するには毎日行うことが大事です。
私はストレスがたまってくると、首から肩にかけてが凝ってきます。特に
右肩が上がりやすいのですが、ほんの10分瞑想をするだけでずいぶん
と楽になります。身についてしまえば、道具もお金も要らない、まったく
安上がりの健康法ですね。
リラックスできるようになってきたら「かゆみが退いていく」とか、「冷やさ
れて、炎症がおさまっていく」とか、自分にとって好ましい皮膚の状態を
イメージしてみるのも良いかもしれません。

7.子どものアトピー
「アトピー性皮膚炎=アレルギー」と思っている方が多いようですが、アト
ピーはアレルギーだけでは説明がつきません。食事や住環境からアレ
ルゲンを追放すれば良くなると思っている方も多いようですが、大変な
努力が必要なわりには効果が乏しいようです。
アレルゲンが何であるかの血液検査をすると、アレルギー反応の出て
いる人では非常に高率で「ハウスダスト」と「コナヒョウダニ」が陽性に
なります。それならば、と言うことで「ダニの除去」を始めると大変です。
本や雑誌の記事などで、ご覧になった方も多いことでしょう。まず絨毯や
カーペットを追放しなくてはいけません。ペットやぬいぐるみの類も、止
めるように勧められます。布団は天日干しした後で、掃除機(布団専用
のノズルがあります)を丹念にかけなくてはなりません。これらをクリアし
た上で、ただでさえ散らかり放題になる子どものいる家を、十二分にそ
うじをするのです。カーテンなども曲者だし、畳もダニを吸い取るように
コマ送り状態で掃除機をかけます。
家の風通しが極端に悪いとか、老朽化したり腐りかけていれば、ダニを
目の敵にしている人は、建て替えたくなってしまいます。それでなくても「アトピー対策」
済みの建材やプレハブ住宅は、あちこちで目にするご時世です。もうそ
うなると、ウン千万単位のお金が必要になってしまいます。
しかしダニを徹底的に取り除いた家に住んで良くなったとしても、子ども
は大きくなって生活範囲が拡大していきますし、いずれ学校や職場など
普通の住環境で生活するようになるのです。それまでに皮膚が丈夫に
なって、アトピーが軽快すれば良いのですが、そうなる保証はありませ
ん。
「アトピー=アレルギー」と考えて、アレルゲン除去にやっきにならないこ
と、そして何よりアトピーは子どものほんの一部であることを認識して、
成長を見守るのが大事であると思います。

8.食事のあり方
●食卓の光景から
家族療法の治療者で、食卓の様子を絵に描いてもらう人がいます。
子どもが描いた絵であっても(子どもが描いたからこそ、かもしれ
ません)、家族の関係性が象徴的に表れるのです。食卓に家族がど
のような配置で座るのか、それぞれがどんな表情で食べているのか、
テレビを見ながら食べているのかどうか、などです。子どもがいつ
もお説教されている家族も、あるかもしれません。
最近は「サザエさん」のように、家族が一緒に食卓を囲むことが
少なくなっていると言われます。お父さんは遠い職場で夜まで仕事
をしているので、帰るのが遅くなります。お母さんも仕事をしてい
るし、子どもも部活をしたり、塾に通ったりで忙しい。となると、
「個食」と言われるように一人ずつ食べてお終いになることも多く
なって来ます。
現代は対人コミュニケーションが苦手な人が増えていると言われ
ますが、その一因として食卓のありようが変化してきたことも考え
られます。例えばテレビを見ながら食べていれば、家族に関する話
題は少なくなるし、家族の関係性も表面化しにくくなります。「個
食」になれば、コミュニケーションの場そのものがありません。
アトピーと食事の関連は、色々な所で言われています。ですから
「何を食べるか」や「何を食べたらいけないか」には気をつけてい
る人は多いのですが、「どのように食べるか」は案外に忘れられが
ちなのです。しかし食卓をコミュニケーションの場としてとらえて
見ると、人格形成にも影響を及ぼすと思われるのです。
読者にはお子さんのために、「アトピーを治すための食事」を実
践している方もいらっしゃると思います。色々なやり方があるので
しょうが、だいたいはお金も手間もかかって、大変なことです。お
母さんは頑張れば頑張るほど、子どもが自分の思い通りに食べてく
れるのを望むようになります。しかし子どもは好きなように食べた
いのですから、時には衝突も起きるでしょう。
子どもがいつも義務的に食べていて、自分が本当に食べたい物を
無視されていると感じていたり、食卓に向かっても家族のだんらん
が感じられないようであったら、それはご飯と言うよりもエサと言
った方が近いのではないでしょうか。ご飯をエサにしないために、
まず「どのように食べるか」を考えていきましょう。
●どのように食べるか
アトピーには、脂っこいものを摂り過ぎると良くないと言われて
います。アトピーに限らず、糖尿病などの色々な成人病を予防する
意味でも、和食を中心とした食事が望ましいと思われます。そして
食卓は、和やかな雰囲気でありたいものです。
アトピーの子どもには、まず主体性を大事にしてあげたいもので
す。例えば野菜を食べるように勧めるのは良いのですが、いきなり
山盛りにして目の前に置かれては、うんざりすることもあるでしょ
う。親が好き嫌いなくおいしく食べることが、子どもの手本になる
のです。
食べ過ぎを防ぐ食べ方は、まず第一に「よく噛む」ことです。30
回、40回と噛んで飲みこむようにすると、血糖値が早く上がって適
量で満腹感が出て来ます。飲み込むように食べてしまっては、腹八
分目なのか、十分目なのか、分ったものではありません。ついつい
お腹が張って苦しくなるまで食べてしまうこともあるでしょう。
食養生を研究している人から聞いた話ですが、インド独立の立役
者だったガンジーは、少食であったけれども大変に立派な体つきを
していたそうです。ガンジーは「食べ物は飲み物のように食べなさ
い、飲み物は食べ物のように飲みなさい」と言ったそうです。つま
り食べ物を飲み物のようになるまで噛んで食べ、飲み物は食べ物の
つもりで噛んで飲むのです。この話をしてくれた人は「昔の人は、
百回くらい噛んで食べていたのではないだろうか」と言っていまし
た。
ところで最近は、「ばっかり食い」と言う食べ方が子どもによく
見られるようになって来ました。肉に箸をつけたらなくなるまで食
べて、お椀に口をつけたら味噌汁を一気に飲むような食べ方です。
しかしこんなフルコースの洋食のような食べ方をしていては、食べ
過ぎたりバランスが悪くなるのです。
和食の良い点は、ご飯とおかずと味噌汁を交互に食べているうち
に、お腹が満たされてくることです。ご飯の量が決まってしまえば、
それに見合ったおかずを食べるので、おかずを食べ過ぎることがあ
りません。主食のごはんをしっかり食べることで、蛋白質や脂肪を
取り過ぎないで済むのです。
このような食べ方を子どもにさせたいのであれば、まず親自身が
実行することです。自分がしないで子どもに一方的に言っても、効
果は期待できません。それに親にとっても、成人病の予防や肥満防
止になるのですから、やってみる価値は十分にあると思います。私
も自分では実行しているつもりです。
●食事日誌から
「何を食べるか」についてこだわるのであれば、アトピーを悪化
させる食品があるのかどうかを、調べなければいけません。しかし
採血して行う「RAST」と呼ばれるアレルゲンの検査を、そのまま鵜
呑みにしない方が良いでしょう。小児科ではこの検査で陽性の食品
があると、避けるように指導されることもあるようですが、この検
査はアナフィラキシー(呼吸困難)を起こすアレルゲンを調べるも
ので、アトピーにもそのまま通用するものではないらしいのです。
実際に特定の食物がアトピーの原因になっているかどうかを調べ
るには、毎日子どもが食べている食材をもれなく書きとめて、アト
ピーの症状とつながりがあるかどうかを見ます。何週間か続けると、
症状とつながりのありそうな食品が見つかるかもしれません。その
食品を止めるとアトピーが良くなり、再び食べると悪化するような
ら、その食品がアトピーを悪くしている可能性が高くなります。
私の息子の時は主治医の先生からの指示で、食事日誌をつけまし
た。その結果、鮮度が少し落ちた青味の魚と、アーモンドやクルミ
などのナッツ類を食べると悪化することがわかりました。この二種
類と、RASTで強い反応が出ていたソバ(ソバのアレルギーは危険な
ことで知られています)には気をつけるようにしていました。
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